この日の朝、ぽん輔も日野に行くということで、米子市内の「どこか」で寝ていた彼を車でひろった。仕事の面接も終わり、後は結果を待つだけで、時間ができたらしい。
センターに着くと、今やっている現場で人手が足りないということで、待機中だったおじいさんとそこへ。移動にはそのおじいさんの軽自動車を使った。始めは快調に走っていた。ところが、信号待ちで止まる、青になる、・・・(20秒)・・・、発車。しかも、どうやらこれが通常の反応速度らしい。・・・不安になる。国道にでると50km/h程で走りだす。この道の流れはおよそ50〜60km/h。まずは順調。しかし、おじいさんは話に夢中になってきた。その熱の入り方に比例して、速度が下がりだし、最終的には30km/hを割り込むほどに。あまり車の通らないこの道で、後ろは大渋滞。・・・不安はつのるばかり。
それでも、なんとか無事にたどり着いた。そこで、大阪から来たというKMさんと知り合う。彼はこのあとも何度か日野町に足を運んでいる人だ。M新聞のカメラマンさんも来ていた。ここでの依頼内容は瓦を屋根からおろすこと。家は取りこわさなければいけないが、瓦はまだ新品なので、また使いたいということだった。全部人力で巨大な屋根の瓦おろし、しかも屋根の上の作業で足元に気を使い、瓦を割らないようにも神経を使う。なんだか、変な汗が出た(どんな汗?)。昼休憩で、一旦、センターに帰ろうというころには、もうくたくた。でも、まだ半分も終わってない・・・。
そして、センターへの帰り道、道が別れるところで、「これ、どっちでしたかな?」と、おじいさん。「右だと思いますよ」と、私。でも、「いや、こっちだったでしょう」と逆へ(!)。結局、道に迷った。しかも、狭い道で、引き返そうと向きをかえるときには、崖から落ちそうになるし。・・・不安は確信に変わりつつある。
昼食をとり終わり、再びあの現場にもどるころになると、やってもやっても終わりの近づかない作業を思いだしブルーになる。「なんとかテンションを高いところにもっていかないと」と思いつつ、おじいさんの車に乗り込む。でも、そのラジオから流れていたのは、長渕剛「巡恋歌」。・・・つらい。次に流れたのは、中島みゆき「悪女」・・・。結局、ローテンションのまま現場に着いてしまった。
午後からは、ますます状況が悪くなり、瓦を一枚一枚手渡しでおろすはめに。瓦を一枚ずつ!!気が遠い・・・。
作業も終わり、センターへの帰り道、信号のない交差点で国道に出ようとしたときのことである。おじいさんが右を確認、車は来ていない。左を確認、来ていない。しかし、なかなか出ない。そのうち、右から車。おいおい、今でるんかい!全身が硬直。断言しよう!不安などではない。事故らなかったのは奇跡にすぎない。今、私がここにいることは奇跡に近いのである。
この日の活動終了後、ぽん輔を米子駅に送った。彼は、明日、明後日と日野に行くつもりということだった。
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